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「舌診」による漢方病気診断法

漢方医学が生まれた時代は、当然、検査薬や診断用機器もありませんので、病気を診断する手段は五感に頼るほかなく、望診・聞診・問診・切診といった方法で患者さんの体の状態をみていました。

そうした漢方の診断法のなかで、よく利用される診断法に「舌診」があります。
舌診とは、その字が示すように舌や舌苔の色や形などの状態を見ることによって健康状態を診断する方法です。

■舌診のよる舌の位置と臓器の関係

舌診では下図のように舌の位置によって五臓の様子、調子を判断します。
舌診
舌の両端は、肝臓の状態を現します。
ですから、熱い飲み物を飲んで舌の横がしみるような場合は、肝臓に異常があると判断します。

舌の先は、心臓の状態を表します。
風邪をひいた時などに舌の先にプツッとニキビのようなものができることがありますが、このようなときには風邪薬と一緒に臓器薬である六神丸などの漢方薬を処方したりします。

舌の奥は、腎臓の状態を表します。
腎臓が悪い方は、舌の奥にプツプツとニキビのようなものが出てきますので、八味丸や六味丸のような排尿の異常などに処方される漢方薬を利用します。


■舌診による舌の色の診断

舌診では、舌の色によって「熱・寒」の判断をします。
舌が赤い場合は、熱を持っている証であり、熱を取る漢方薬を処方します。
また、舌が赤い場合は、急性の病気である時に見られます。
逆に、舌が白い場合は、冷えている証であり、温める漢方薬を処方します。
舌が白い場合は、慢性の病気である時に見られます。

一口に風邪と言っても、温めなければならない風邪と、熱を取らないといけない風邪があります。
ですから、舌が赤い時は、熱を取る処方の風邪薬、舌が白いときには温める処方の風邪薬をそれぞれ使い分ける必要があるのです。


■舌診による舌の形状の診断

舌の渕がギザギザしている場合があります。
これは舌がふわふわと柔らかく、舌に歯形がついているのです。
このような場合は、尿の出が悪く、体内に過剰な水分がたまるためにおこる症状です。
逆に、舌にひび割れが現れ、全体的に舌の形は細く痩せて尖った形状であれば、お年寄りなどに多く見られる舌が乾燥した状態であり、体液が不足しています。

ストレスで胃が悪い人は、舌の色が淡白色で、横にひび割れのようなすじが入ります。
さらに、胃潰瘍などで胃の状態が悪い場合は、縦にはっきりとしたひび割れは出る方がいます。



「気・血・水」による漢方治療診断

漢方医学では、陰陽による「証」をみることが基礎となる治療診断法ですが、さらに体内における「」の流れが順調に巡っていることが健康の条件として診断されます。

■漢方における「気」とは?

漢方における「気」とは、活力生命力のことで、現代風にいえば「オーラ」のようなものと言えるでしょう。
「気」が異常になると、不安、不眠、だるい、元気がない、疲れるなどの症状が現れます。


■漢方における「血」とは?

漢方における「血」とは、血液でありエネルギーの源のことです。
血液が汚れて流れが悪くなった状態を漢方では「お血」といい、顔全体、特に目のまわりが黒ずむ、歯ぐきが紫色になるなど更年期障害の方に多くみられます。


■漢方における「水」とは?

漢方における「水」とは、血液以外の体液、体内の組織液リンパ液のことです。
「水」が異常になると、下痢、吐きけ、むくみ、動悸、めまい、頭重、だるいなどの症状が現れます。


陰陽による漢方治療診断

漢方における病気の診断方法の基礎は、陰陽説に基づいたものです。
陰陽説は、天地間で起きる全ての現象を陰と陽の2元でとらえる考えで、病気においても体の陰陽のバランスが崩れて、どちらかに偏った結果起こるものであるというものです。
つまり、体が陰に偏っていれば陽の漢方薬を処方し、体が陽に偏っていれば陰の漢方薬を処方することで、崩れた体のバランスを元に戻し、病気を治療するのです。

■漢方では「証」をみる

漢方では、患者さんの体質や病気の進行具合、病気の性質などの患者さんの状態のことを「」といいます。
証をみるには、「表・裏」「熱・寒」「実・虚」を判定し、これを組み合わせることで以下のような8つのタイプに分類します。

漢方における証の組み合わせ


■漢方における「表・裏」は体の部位による区分

「表(陽)」・「裏(陰)」は人間の体の部位によって分類しています。
病気になると、まず「表」の部位に異常がおこり、次第に体の内部である「裏」へと移って行き、体全体が衰弱していくという考えです。

「表」の部位は、咽喉、皮膚、筋肉、骨、関節などで、発熱、悪寒、咽喉痛、発汗、関節痛などの症状として現れます。

「裏」の部位は、上気道、気管支、胃などで、腹痛、便秘、下痢などの症状が現れます。

また、「表」「裏」の間の中間的な部位として肺、小腸、大腸などがあり、口苦、口渇、悪心、嘔吐、食欲不振などの症状が現れます。


■漢方における「熱・寒」は病状の性質による区分

「熱・寒」は、病状の性質によって分類しています。
ただし、体温が高いから「熱」で、体温が低いから「寒」という訳ではありません。
例えば、高熱があっても体がゾクゾクと寒気がする場合は「寒」となります。
つまり、患者自身の自覚症状によって決まるのです。


■漢方における「実・虚」は体質による区分

「実・虚」は、体質によって分類しています。
体が丈夫で抵抗力がある人は「実」であり、病気の回復も早く、一方、虚弱体質で抵抗力がない人は「虚」であり、病気の回復も遅くなります。
ですから、同じ病気であっても、患者さんの体質によって処方する漢方薬が変わってくるのです。

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